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アリスの影と夢

 アリスは夢を作品にし、生活をしている。アリスの夢は、不思議だった。彼女の分身の影が出て、様々なことを行う。影に感情はなく、まるで心を失ったようだ。アリスは影を慈しみ、影のことを思い遣る。影は新しい冒険譚を出ることもあれば、未来世界に身を投じることもある。アリスは深く影を愛した。自分自身のように。

 アリスが影に夢の中で出会ったのは、二年前だ。その頃、アリスは新進のライトノベル作家として活躍していた。最初の夢は、影が女王になり、国を統治するというもので、彼女の作風に合った。彼女はその夢をファンタジーに仕上げた。小説は、本になり、全国に販売された。彼女の懐は潤った。

「問題は、その影は私自身ということなの」と彼女は僕に言った。僕は耳を澄ませた。音楽はワグナーだった。彼女の部屋は広く、観葉植物の木があった。

「影は何をするのか分からないし、後味の悪いものも確かにあった。まるで、私の欲望を投影しているように、私の目には映った」

「夢の中の話だろう?」僕は訊いた。彼女は肩をすくめ、力なく笑った。「夢は密接に、現実世界とリンクしているわ。私は気味の悪い夢が続くようになって、心理学の専門家のところへカウンセリングに行った。その先生は、最新の心理学を用いて、私の夢を解析したわ」

「どうだったの?」

「呪いのようだ、と先生は言った。私は耳を疑った。しかし、彼ははっきりと呪いという言葉を口にした」

 僕は黙っていた。

「影は今も、私の中に生きている。私は自身の分身をこよなく愛す。しかし、彼女は時折、犯罪をおかし、痛快に殺人をする。私は目を覆いたくなる」

 正直に言って、最近のアリスはおかしかったし、不安定だった。僕はなぐさみの言葉を掛けた。彼女はうっすらと笑い、膝を揃えた。

「私は夢を語る仕事をしている。しかし、夢にはもううんざり。最近は、眠りたくないの」と彼女は呟いた。

 

 僕は自宅に戻り、バーボンのロックを作った。今宵、見る夢のことを想った。アルコールは深い酩酊に誘う。僕はゆっくりと目を閉じた。