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小説のブログです!

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

アリスの影と夢

アリスは夢を作品にし、生活をしている。アリスの夢は、不思議だった。彼女の分身の影が出て、様々なことを行う。影に感情はなく、まるで心を失ったようだ。アリスは影を慈しみ、影のことを思い遣る。影は新しい冒険譚を出ることもあれば、未来世界に身を投…

昨日を愛した僕の理由

目まぐるしく進み続ける時間に対し、僕は畏敬の念を持った。その最中に、昨日の出来事はより鮮明になった。僕は昨日という時間を思い起こし、一息ついた。 昨日、僕は美術館にいた。印象派の展覧会だった。マルク・シャガールやアメディオ・モディリアーニの…

簡潔に自己紹介

青井理亜。1979年生まれ。大阪府在住、男。関西大学文学部史学・地理学科卒業、家電量販店の店員を経て、システムエンジニア。30歳のときに、双極性障害を発症、現在は療養生活。好きな作家は村上春樹、サマセット・モーム、山崎ナオコーラ。好きな音楽は、Y…

愛ならどこにあっても構わない(終章)

正月、元旦の日の朝早くに、僕はのぞみを迎えに行った。玄関先でのぞみの母親と父親に挨拶をした。父親はにこやかに笑い、「娘とのデート、よろしく頼む」と言った。僕はのぞみにお年玉を渡した。三万円を入れておいた。のぞみにとって大金だったが、構わな…

愛ならどこにあっても構わない(10)

秋が終わり、冬がやってきた。十一月の初旬になった。岩崎と夏希は、仲良くやっていた。彼らと僕と由希子の四人で、ダブルデートに行ったりもした。由希子は製薬会社の仕事をこなしていた。帰りが遅くなることも多くなった。僕は料理の勉強を始めた。簡単な…

愛ならどこにあっても構わない(9)

秋が終わり、冬がやってきた。十一月の初旬になった。岩崎と夏希は、仲良くやっていた。彼らと僕と由希子の四人で、ダブルデートに行ったりもした。由希子は製薬会社の仕事をこなしていた。帰りが遅くなることも多くなった。僕は料理の勉強を始めた。簡単な…

愛ならどこにあっても構わない(8)

十一時過ぎには眠った。幾つか短い夢を見たが、起きたらすべて忘れてしまっていた。朝の九時だった。由希子の姿は既になかった。朝食の用意が整っていた。彼女にだって、打ち明けたくない秘密があるのだ。お互い様だった。 夕方の六時に、新宿のアルタ前で待…

愛ならどこにあっても構わない(7)

のぞみの様子がおかしくなったのは、秋の軽井沢旅行が終わって、冬休みに入ったころだった。よくアルバイトの予定をすっぽかして、クビになったり、喜怒哀楽が激しくなった。僕と会っていても、楽しいのか楽しくないのか、分からなかった。まったく話さなく…

愛ならどこにあっても構わない(6)

大学生活は二年目に入っていた。日々は牧歌的だった。美紀は隆人とうまくやっている様子だったし、僕とのぞみの関係は良好だった。春には桜を見に行ったし、夏には海へ行った。夏休みに、僕は引っ越しのアルバイトをしていた。体力を付けたかったのと、給料…

愛ならどこにあっても構わない(5)

のぞみとの大学生活に話を戻そう。沖縄で知り合った亜希と美紀とは、時々ご飯に行ったりしていた。年齢は近かったし、彼女たちは屈託がなく、話しやすかった。のぞみは親近感を抱いていたようだった。彼女はテニスサークルに所属していて、友人は多かった。…

愛ならどこにあっても構わない(4)

由希子は大学を卒業すると、僕と同棲を始めた。渋谷の一角に、手頃なマンションを借りた。叔父が不動産関係の仕事をしているものだったから、格安で借りることができた。秋葉原へ行って家電製品を買ったり、東急ハンズやロフトへ行って家具や雑貨を買った。…

愛ならどこにあっても構わない(3)

仕事帰りの夜に、よく由希子がいるカフェへ行った。彼女が働いている姿を見ると、気持ちが穏やかになっていった。リラックスすることができた。カフェは混んでいることもあれば、すいているときもあった。大通りは、人々の群れでごった返していた。冬は師走…

愛ならどこにあっても構わない(2)

由希子とはあのカフェで出会って二週間後にデートをした。冬の日曜日の昼に、渋谷で待ち合わせをして映画館に入った。フランスの古い映画だった。彼女は映画鑑賞が趣味で、特に恋愛物が好きだった。女優の名前、俳優の名前はたくさん言うことができたし、愛…

愛ならどこにあっても構わない(1)

雨が良く降っている冷たい夜だった。由希子との出会いは、一年半前のあの日に遡る。一目見て、素敵な女性だと思った。仕草がかわいらしかったし、目にはひかりがたっぷりと輝いていて、笑顔が綺麗だった。僕は渋谷のカフェで雨宿りをしていた。酷い雨だった…